口約束で貸したお金に返済義務はないよね?
学生同士や同僚、知人との間で、お金の貸し借りをした場合、多くは口約束となります。
親しい間柄になるほど希望金額は大きくなっていき、気づけば貸し損となっているかもしれません。
口約束ということは契約書や借用書がないわけですから、返済を強く要求しても相手が無視することも考えられます。
個人間での金銭のやりとりに、返済義務は発生するのでしょうか。
借用書がない口約束の契約は有効か
結論から先に言うと、法律上では有効です。
というのも借用書が存在していなくても、当時は貸す側と借りる側が口約束により、金銭消費貸借契約を結んだことになるからです。
金銭消費貸借契約とは、銀行や消費者金融が融資をする際に締結する契約であり、民法上の効力を有しています。
また、貸し手が返済期日を設けたにもかかわらず、その日までに返してもらえなかった場合、履行遅滞という扱いになり損害賠償請求ができるようになります。
ただし時間が経つと、必ず借り手は口約束でのお金の貸し借りは無効だと主張し始めます。
これは、あながち間違いではありません。
法律上では有効と言いましたが、契約内容を書面に残していない以上、借り手が拒否を続ければ回収が困難となります。
両者の記憶だけが頼りとなる契約ですので、返済してくれないから裁判を起こすと意気込んでも、十分な証拠を揃えることができないのです。
残念ながら記憶とは曖昧なもので、お互いに自分が有利となる契約であったと、無意識のうちに記憶をすり替えてしまいます。
記憶だけを頼りに裁判を起こしても、まず勝ち目はないでしょう。
借りた側の反応によって民事事件にも刑事事件にもなる
来月まで待ってなどと、借り手が返済の意思表示を見せたとします。
それでも一向に返済をしない時は、民事事件となります。
事件になれば返してもらったも同然と思われるかもしれませんが、民事事件に警察は介入できません。
そして唯一、味方となってくれる弁護士も相手に注意をする程度しか動けないのです。
ある意味では、返すという意思表示が邪魔になり、回収が難しくなります。
逆に、借りたという契約そのものを否定すれば、刑事事件へと切り替わります。
貸し手は弁護士に頼めば裁判を起こせますし、他にも被害者がいるなら詐欺容疑で訴えることもできます。
口約束であろうが契約を結んでいないと主張しているわけですから、小さなことでも証拠を見つけられれば、裁判では圧倒的に有利となります。
LINEやメールでのやり取り、振り込み履歴、その場にいた友人や知人の意見などが証拠には該当します。
問題は裁判を起こすだけの価値があるのかという点です。
裁判で貸し手側の主張が通れば、借り手は裁判費用も負担しなければいけません。
勝訴によって気持ちは晴れるかもしれませんが、手間と時間がかかります。
支払い義務が成立したとしても、貸した金額が100万円を超えているなら、相手に返済能力がない場合も考えられるでしょう。
裁判に勝ったからといっても、すぐに貸したお金が手元に返ってくるとは限らないということです。
貸したお金を返してもらえる有効期限
借金には時効があります。
友人や知人といった個人に貸した場合、契約は10年で時効を迎えます。
法人相手であれば5年です。
毎月10日に返済してくださいという細かな契約を結んだとします。
仮に1回目の返済期日までに1円も返してもらえなければ、その翌日から時効成立までのカウントダウンが始まります。
5回目までは契約通りに返済をしてきたが、6回目には全く返済されなかったなら、6回目の翌日からが時効進行の基準日となります。
返済期日を決めていなかった時は、契約を結んだ日の翌日からがスタートです。
貸し手が請求や差し押さえ、借り手が債務の承認をすると、時効は一時的に中断されます。
中断すると、結果的に時効までの期間は伸びます。
また5年や10年経ったからといって、時効は勝手に成立しません。
成立には内容証明郵便を貸し手に送り、援用する必要があります。